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抗悪性腫瘍剤「ドキシル®注20mg」の承認を取得 ~薬物送達システムの活用により有害反応を軽減~

2007/01/10

米ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)の医療用医薬品日本法人、ヤンセンファーマ株式会社(東京都千代田区、社長:関口 康)は、去る1月4日付で、エイズ関連カポジ肉腫※1に適応を有する抗悪性腫瘍剤「ドキシル®注20mg」(ドキソルビシン塩酸塩 リポソーム注射剤)の承認を取得しました。

 

「ドキシル®注20mg」は、ドキソルビシン塩酸塩をPEG化リポソーム脚注1(STEALTH®リポソーム※2)に封入したドラッグデリバリーシステム(DDS:薬物送達システム)を活用した製剤で、J&J医薬品開発会社アルザ社(ALZA)の製剤技術を駆使して製品化されました。本剤はマクロファージと呼ばれる免疫機能に関連する貪食細胞に捕捉されることなく、標的組織へ有効成分を運搬することを目的に設計されています。このことにより、リポソームが腫瘍組織に集積し、有効成分であるドキソルビシンを徐々に放出することによりドキソルビシンの腫瘍組織内滞留時間を延長し、腫瘍組織内濃度を高め、血漿中の遊離型ドキソルビシンの濃度を抑えることで、骨髄抑制・脱毛・心毒性等の有害反応が軽減されます。

 

HIV感染症の治療は近年急速に進歩してきており、HIVのウイルス量抑制と、それに伴う免疫機能の維持や回復が可能となった結果、日和見感染症の発症率が減少し、HIV感染症全体の予後も改善してきました。しかし、このような状況の中でエイズ関連カポジ肉腫については、現在まで適応を有する薬剤が無かったため治療薬の開発が臨床現場で望まれていました。

 

「ドキシル®注20mg」は既に米国を含む約80カ国で承認されており、海外臨床試験において、全身化学療法を行っていない患者において、54.7%の奏効率脚注2を有し、また前治療を行なった患者でも42.9%という奏効率が認められています。

当社は「ドキシル®注20mg」を薬価収載後、速やかに発売する予定です。

 

脚注1  リポソームの表面をメトキシポリエチレングリコールで包むことにより、

            マクロファージに異物と認識されにくくする

脚注2  腫瘍縮小効果を表す率

 

(※1)エイズ関連カポジ肉腫
カポジ肉腫は多発性特発性出血性肉腫とも呼ばれ、エイズ患者における最も一般的な悪性腫瘍である。しばしば斑点またはもり上がった青紫色や赤い病変として現れ、大きくなり出血することもある。皮膚粘膜が侵されると局部リンパ節にも影響を及ぼし、結果としてリンパ節腫脹や大きなリンパ水腫が生じる。消化管粘膜も侵し、出血や上部消化管に不快感を引き起こす。肺、肝臓を含む他の器官にも損傷を与え、死に至ることもある。

 

(※2)STEALTH®リポソーム
マクロファージ(免疫機能に関連する情報伝達機能を有する)等の貪食細胞に捕捉されることなく標的組織へ有効成分を運搬することを目的に設計されたドラッグデリバリーシステム(DDS:薬物送達システム)。STEALTH®リポソームは直径が約100nmと小さいため、透過性が異常に亢進した腫瘍の毛細血管系を通じて腫瘍組織の間質腔に侵入することができる。このようにして腫瘍組織に蓄積したドキシル®は、リポソーム部分が徐々に分解され、周囲の腫瘍細胞にドキソルビシンを放出する。

 

 

製品概要
【承認取得日】  2007年1月4日
【販売名】        ドキシル®注20mg
【一般名】        ドキソルビシン塩酸塩 
【薬効分類】     抗悪性腫瘍剤
【効能・効果】    エイズ関連カポジ肉腫
【成分・含量】    1バイアル10mL中ドキソルビシン塩酸塩20mg含有
【色・性状】       赤色の懸濁液
【用法・用量】    ドキソルビシン塩酸塩として20mg/m2を1mg/分の速度で静脈内投与する。

                     これを1コースとして2~3週ごとに投与する。なお、年齢、症状により適宜減量する。
【包装】            ドキシル®注20mg:1バイアル(10mL)