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統合失調症の幻覚擬似体験シミュレーター「バーチャル・ハルシネーション日本版」を開発

2003/12/12

米国ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品日本法人、ヤンセンファーマ株式会社(社長: 関口 康)は、このたび統合失調症の急性期に見られる症状をリアルに擬似体験できる装置、「バーチャル・ハルシネーション(以下VHと略称)日本版」を開発しました。同社では、VH日本版を来年早々にも、全国の医療機関ならびに家族会を対象として、無償にて貸出し対応を図る計画です。

VH日本版は、統合失調症への理解を深めてもらうための疾患教育のツールとして、一昨年の5月にヤンセンファーマが国内に導入した「VH米国版」の後継モデルです。体験者は従来版と同様、センサー内臓の「フェイスマウントディスプレー」を装着し、コンピューターグラフィックスとステレオ音声によって、幻覚の擬似体験をすることが可能です。

従来版は導入2年半あまりで、全国の民間精神病院の約6割をカバーした他、のべ体験者数は42,000人を超えるなど、精神医療従事者やご家族の皆さんから、当事者の苦しみを理解するツールとして好評をもって迎えられました。しかしながら、「統合失調症の症状としてはむしろ稀である視覚の異常体験が強調されすぎており、誤解を生みかねない」といった懸念も、一方には存在しており、1年前よりプログラムの全面更新が検討されていたものです。

VH日本版の開発テーマは、「統合失調症の急性期にみられる症状を、なるべくリアルな形で疑似体験できるようにして、統合失調症の正確な理解のために役立てていただく」ことでした。開発に際しては、医学監修として国立精神・神経センター武蔵病院外来部長の原田誠一先生、制作支援、アドバイザーとして財団法人全国精神障害者家族会連合会(理事長:小松正泰氏)の多大なご協力をいただきました。加えて、同武蔵病院家族会ならびにコメディカルスタッフ、そして当事者有志の皆さんからも、それぞれの実体験に基づく貴重なご意見が伺えたことによって、当事者以外には理解が難しかった世界をより実態に近い形で描写することが可能となりました。

ヤンセンファーマでは、来年の早い時期からVH日本版全25台をフル稼働させて、疾患教育の強化を進めていく計画ですが、引き続き多方面から貸出し要望が寄せられることが予想されるため、当面は医療関係者(医師・看護師等)と家族会に限定して貸出し対応を行う予定です。

また、「病気への社会的偏見を是正する」という、VH開発のねらいに照らすと、これまで装置を体験する機会のなかった保健師、医学生、看護学生、教員といった多くの方々にも、VH日本版を体験していただくことは大変重要なことであると考えます。 ヤンセンファーマでは、近い将来、VH日本版の普及モデルとも言うべきプログラムをCD-ROMにインストールし、一般も含め、広く疾患教育に資することも検討中です。

精神科領域のリーディングカンパニーとして、単に薬剤の供給のみならず、医療現場や当事者を意識した社会貢献活動も企業の使命と考えているヤンセンファーマでは、これまでにも「精神分裂病」病名変更キャンペーンへの協賛、年間20万冊に及ぶ疾患小冊子の無償配布、精神医療をテーマとしたマスメディア向けの啓発セミナーの開催など、精神疾患や当事者に対する偏見是正のための啓発活動に注力してきました。

こうした活動は、いずれも統合失調症治療のゴールである、当事者の社会復帰を後押しすることを終局の目的としており、VH日本版の開発もこの一環として行われているものです。このVH日本版の体験をきっかけに、多くの人が統合失調症は治療が有効であり、適切な治療があれば、当事者の多くは社会生活が可能であるとの理解を深めていただくことを念願しています。  
 

以上