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「痛みに関する一般意識調査」集計結果 ~「我慢しないで伝え」て「相手から共感」されるだけで痛みが軽減~

2004/03/02

米ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品日本法人、ヤンセンファーマ株式会社(住所: 東京都品川区、社長: 関口 康)は、2004年1月に全国一般の523名を対象として、「これまでの記憶に残る、最も強い身体的な痛み」に関する意識調査をインターネットを使って実施しました。今回の調査結果から、「痛みを我慢せずに誰かに伝えたり、相手が共感を示してくれることで、痛みの感じ方が軽減」され、痛みの感じ方に心理状態が影響することが明らかになりました。

「これまでの記憶に残る、最も強い身体的な痛み」を感じたときには約7割が「なんらかの不安を感じた」と回答し、その痛みを約9割が「誰かに伝える」と回答しました。「痛みを伝える理由」としては、約2人に1人が「とにかく痛いということをわかってもらいたいから」と回答し、「痛みを和らげる何らかのアドバイス(病院に行く、薬を飲むなど)を得たいから」を上回りました。また、治療に積極的になるために痛みを理解して欲しい相手として最も多かったのは「配偶者・パートナー(50.0%)」で、医師、看護師など専門家である「医療従事者(22.6%)」よりも一番身近な人の理解をまず求めていることがわかりました。

 

■約3人に1人は周囲の優しさや同情で「痛みが軽くなった」
痛みを伝えたときの「周囲の反応」は、「優しくしてくれた」が44.6%(複数回答)、「同情してくれた」が41.9%(同)で【グラフ(1)】、これらの対応によって「痛みが軽くなった」、「どちらかといえば痛みが軽くなった」と回答した人はあわせて28.4%、約3人に1人が周囲の優しさや同情、アドバイスによって痛みが軽減することが明らかになりました。【グラフ(2)】また、痛みを伝える理由の中で、「伝えることで痛みが和らぐような気がするから」と回答した18.9%(複数回答)のうち、周囲の反応によって「痛みが軽くなった」、「どちらかといえば痛みが軽くなった」と感じた人の合計が53.5%となりました。痛みを和らげたいという意識で人に伝える人は、他の理由と較べて痛みが軽くなる率が一番高く、周囲の優しい言葉や理解ある態度によって痛みが軽減する傾向にあることがわかりました。【グラフ(3)】

 

■「他人の痛みはよく分からない」が約3人に1人
多くの人が自分の痛みはとにかく伝えたいと思っている一方で、他人が痛みを訴えてきた場合、相手を気遣う気持ちがあったとしても「よく分からない」と感じる人が多数であることが明らかになりました。「あなたがよく知っている人が『わき腹がじくじく痛いと一生懸命訴えてきた』場合、相手の痛みについては、「気の毒に思うが他人が感じる痛さは、自分では想像できないと思う」が33.7%、「分かる気がするが、本当にはわかっていないのではないかと不安に思う」が23.1%、「痛みがあるのはわかるが『じくじく痛い』という表現ではわかりづらい」が22.8%と、79.6%の人が本当には分からないと感じており、「自分にもその痛みが伝わってくる」と回答したのは14.7%に留まりました。【グラフ(4)】

 

■痛みを我慢するのは、「周囲への配慮」と「周囲の否定的な言動」
痛みを「伝えない」、「伝えるのを躊躇する」場合の理由は、「周りが心配するので余程の痛みでない限りは我慢しようと思うから」が50.9%(複数回答)と回答者の半数が理由の一つと選んでおり、周囲に対する遠慮によって痛みを我慢することが多いことがわかりました。また、「相手に『大袈裟だ』という態度をされることがわかっているから」が19.5%(同)、「弱い、根性がない、我慢が足りないと思われたくないから」が19.3%(同)と、「痛み」を伝えることで相手から否定的な態度をとられるのを恐れることも、痛みを我慢する原因となっていることがわかりました。【グラフ(5)】

順天堂大学麻酔科学・ペインクリニック講座教授 宮崎東洋先生は、この調査結果を受けて次のように述べています。「痛みは不快なばかりでなく、長引くほどに気力・体力を消耗させるため、病気や怪我の治療に前向きに取り組むためにも早期に緩和することが大切です。また、痛みの感覚は心理状態と影響し合うため、痛みが続くことでさらに気分が落ち込むなど治療にはマイナスになります。逆に、多くの患者さんにとって、理解してもらえるという安心感が症状にも良い作用をもたらします。今では、ほとんどの痛みを適切な方法によって抑えることができるようになり、痛みの緩和は、病気や怪我の治療の一部として認識されています。患者さんが痛みを我慢していると、治療の機会を狭める結果にもなります。痛みを『我慢しないで伝える』ことは、早期に適切な治療をうけるための第一歩ともいえる重要なことです。」

順天堂医院ペインクリニック看護師 藤澤留美子さんは、次のように述べています。「看護師が患者さんに、具合をたずねたり世間話を持ちかけたりするのは、患者さんの状態を知るだけでなく、患者さんの痛みに関心をもち、理解をすることで『痛みの閾値*』を上げる医療行為としての側面もあります。『痛みの閾値』を低下させる因子に『内向的心理状態』や『孤独感』があげられます。痛みを感じている人が周囲の関心を得られない状態は痛みが『増す』ことにつながります。例え、医療機関にかかっていなくても、痛みを感じている人がいたら、その人の痛みに対して関心を持ちかけることはとても重要なことと考えます。」

 

以上

 

*) 痛みの「閾値(いきち)」
痛さを感じ始める境界点であり、人によって異なる。閾値にはその人の精神や健康状態によっても大きく変化する因子があるとされている。その閾値を変化させる因子は以下の通り。

低下させる因子(痛みが増す)・・・・・・不快感、不眠、疲労、不安、恐怖、怒り、悲しみ、うつ状態、倦怠、

                                           内向的心理状態、孤独感、社会的地位の喪失
 
上昇させる因子(痛みが緩和する)・・ 睡眠、休息、周囲の人々の共感、理解、人とのふれあい、

                                           気晴らしとなる行為、不安の減退、気分の高揚、鎮痛薬、

                                             抗不安薬、抗うつ薬 

 

参考資料(主な調査結果データ)
調査概要
調査実施日 2004年01月28日(水)~2004年01月29日(木)
実施方法 インターネット調査
回答者 20歳以上の男女 523名