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患者さんが選ぶ“医療用麻薬”とは ~2007年「医療用麻薬に関する一般調査」より~

公開日: 
2007/06/20

米国ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品日本法人であるヤンセンファーマ(本社:東京都千代田区、社長:関口康)は、欧米に比べ普及が遅れていると言われている「緩和ケア」や「医療用麻薬*」の使用に関する一般の理解及び受容の度合いを調べるため、インターネットを介し、がん患者やそのご家族を含む500名規模の「医療用麻薬に関する一般調査」(調査設計:社会福祉法人恩賜財団 済生会若草病院 副診療部長兼外科部長 佐藤靖郎)を実施しました。

 

先ごろ発表された厚生労働省の「がん対策推進基本計画(案)」では、今後10年間に「がんによる死亡率の2割削減」と「すべての患者・家族の苦痛軽減」を目指すことが目標に掲げられ、がんの治療のみならず、がんに伴う苦痛除去を目的とした「緩和ケア」や「がん疼痛治療」普及の重要性が改めて示唆されました。しかしながら、「がん疼痛治療」において重要な役割を担う「医療用麻薬」についての一般の認知レベルは依然として低位にあることが予想されます。

 

“麻薬”という響きから想起される負のイメージに限らず、一般の方々は「医療用麻薬」に対してどのような思いをお持ちなのでしょうか。今回の一般調査から意外な認知の現状が浮き彫りとなりました。

 

 

<本調査で明らかにされたこと>

1. 医療用麻薬の代名詞として“モルヒネ“ががん疼痛に使用されていることは大多数(9割弱)の人が認知。その一方で、モルヒネ以外の医療用麻薬が使用できることはほとんど知られていない。

2. 医療用麻薬の使用にあたって、最も抵抗の少ない剤形は「貼り薬」であり、次に抵抗の少ない剤形は「飲み薬」であった。

3. 医療用麻薬の剤形は、自分自身で選択したいと考えている人が大多数であった。

*医療用麻薬:モルヒネ等の麻薬は、がんによる強い痛みなどに使用され、国が医療での使用を許可した麻薬が医療用麻薬と呼ばれる。

 

 

1. 8割がモルヒネ以外の医療用麻薬が使用できることを知らない

 

がん疼痛に対して使用できる医療用麻薬の認知度について調査した結果、「モルヒネが使用されていることを知っている」と回答した方は、意外にも88%の高率に達しました。これに対して、「モルヒネ以外の医療用麻薬が使用できることを知っている」と回答した方はわずか20%でした。

 

2002年以降、従来のモルヒネ製剤に加えて、がん疼痛にフェンタニルやオキシコドンが使用できるようになっていますが、これまでの歴史的経緯に加え、医療用麻薬に関する情報提供に制約があることも手伝ってか、依然として、モルヒネが医療用麻薬の代名詞として捉えられている現状が伺えます。

 

今回の調査設計を担当した済生会若草病院の佐藤医師は、
『フェンタニルやオキシコドンもモルヒネと同じ医療用麻薬ですが、「モルヒネではない」ことで、患者さんご自身が安心され、結果的にこれらの医療用麻薬による疼痛治療を受け容れることも少なくありません』と述べています。【図1】【図2】

 

 

2. 医療用麻薬で最も抵抗の少ない剤形は「貼り薬」、次いで「飲み薬」であった

 

今日、使用可能な医療用麻薬の剤形(飲み薬、坐薬、注射および貼り薬)について、医療用麻薬を使用しなければならない場合、使用に抵抗の少ない順に順位付けをしてもらった結果、最も抵抗が少ない剤形は「貼り薬」であり、次に抵抗が少ないとされた剤形は「飲み薬」でした。

 

この結果について、佐藤医師は、
「医療用麻薬を内服することへの心理的抵抗が原因の一つと思われます。貼り薬という別の選択肢を提示することで、がん疼痛治療への患者さんの受容度が高まる可能性を示唆しているのではないでしょうか。」と語っています。【図3】

 

 

3. 剤形、選べるのなら自分で決めたい

 

また、医師から個々の医療用麻薬の効果・副作用などに関する説明があった場合、9割以上の方が「自分で剤形を選びたい」と回答しています。【図4】

 

佐藤医師は、
「”食事が摂れるのだから経口剤“、”食事が摂れないから貼付剤“というような、医療者側の一方的な論理だけでは患者さんは納得されないことが多いと思います。ことさら”麻薬が投与される“と聞けば、抵抗感は更に増すでしょう。今日、医療用麻薬の剤形には経口剤、坐剤、注射剤だけでなく貼付剤もありますので、患者さんには複数の選択肢を提示し、正確な情報提供をしたうえで、ご本人はもとより、ご家族の方も納得できる剤形を選択していただくことが、がん疼痛治療への受容度を高める上で重要だと思います。」と述べています。

 

ヤンセンファーマは、がん疼痛患者さんの更なるQOL向上のために、関係方面と協力しながら、わが国の緩和ケア及びがん疼痛治療の普及に引き続き尽力してまいる所存です。

 

 

<本調査の概要>

 
[調査目的]一般人・がん患者及びその家族を対象に、医療用麻薬に対する理解度と受容度を確認する[調査手法]インターネット調査[調査対象]20歳以上の一般人、がん患者及びその家族 計500名
(内訳)
一般人    300名
がん患者及びその家族  200名
            -自分ががん  25名
           -家族ががん 175名[調査地域]全国[調査時期]2007年5月1日~5月6日[調査設計]社会福祉法人恩賜財団 済生会若草病院 
副診療部長兼外科部長 佐藤靖郎[調査機関]ニールセン・カンパニー株式会社