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世界初、「バーチャルAD/HD」を開発 AD/HD(注意欠陥/多動性障害)のある子どもの世界を疑似体験

2008/12/05

ヤンセンファーマ株式会社(社長: 関口 康)は、このほどAD/HD(注意欠陥/多動性障害)のある子どもに見られる症状の一端を擬似体験する装置、「バーチャルAD/HD」の開発を完了し、本日より全国の医療機関を対象に無償での体験機会の提供を開始いたします。

 

「バーチャルAD/HD」は、これまで根強い誤解の存在が指摘され「見えにくい障害」とも言われてきたAD/HDの病態や症状、当事者である子どもたちの心情を理解するための心理教育ツールです。この装置は周囲の人間が当事者の思いのほどを理解し、適切な支援へとつなげていくことを目的として、医療の専門家による監修に加え、当事者のお声なども参考にして制作されました。

 

当社では、立ち上がり時に25台の「バーチャルAD/HD」を全国の各支店に配備し、鋭意、普及を図っていく予定ですが、しばらくは多方面からの体験要望が集中することも想定されるため、当面は原則、医療関係者(医師・看護師・臨床心理士等)を主たる対象として実施してまいります。

 

「バーチャルAD/HD」は全編約6分の映像プログラムであり、体験者は自らの頭の動きを検知する特殊センサーを内臓した「フェイスマウントディスプレー」を装着することで、三次元コンピューターグラフィックスで構築された360度全周映像の中から、任意で視界を変えることができます。
同時に、特殊高性能マイクを使用した音声収録によって、自然界にごく近いサラウンド音像(バイノーラル音源)を体感することができ、これらの先進技術が相まって、AD/HDのある子どもの世界をリアルに擬似体験することを可能としています。

 

米国精神医学会の診断基準第四版新訂版(DSM-IV-TR)によると、AD/HDは学齢期の子どもの3-7%に見られるとされるごくありふれた発達障害です。しかし、周囲の無理解ゆえに、当事者の多くは「努力が足りない」「わがまま」「しつけができていない」と責められることが多く、周囲との摩擦も絶えないことから著しく自己肯定感を下げてしまったり、深刻な二次障害に至ってしまったりするケースも少なくありません。こうした苦悩は子どもたちの保護者にも共通のものです。

 

一方、今日においてAD/HDをはじめとする発達障害は、タイムリーな療育的介入や支援の提供によって症状の改善が期待できるとも考えられています。また、「AD/HDという障害は、理解と支援があれば個性にも才能にもなる」(NPO法人えじそんくらぶ代表:高山恵子氏)との見方も、家族会関係者の長年のご尽力によってようやく普及しつつあります。

 

このように、AD/HDのある子どもの育ちには、障害特性への正しい理解に立った適切な対応が欠かせませんが、おそらく、当事者である子どもが実際の世界をどう捉えているのかを知ることは、対応の成否をわける重要なポイントであると思われます。

 

ヤンセンファーマでは、この「バーチャルAD/HD」を絶対的な専門医不足と施設偏在の問題が指摘されている医療現場に広く普及させ、これによってAD/HDの子どもへの理解と支援の拡大につなげるとともに、障害が疑われる子どもの診療、診断にお役立ていただくことを切望しております。

 

 

バーチャルAD/HD概要

 監修者:

 

岡田 俊 先生

京都大学医学部精神医学教室 院内講師

斎藤 万比古 先生

国立国際医療センター国府台病院 第二病棟部長

宮島 祐 先生

東京医科大学小児科講師

 

五十音順)

制作: クレアクト・インターナショナル、デジタルデザインスタジオ

企画: ヤンセンファーマ株式会社

後援: NPO法人えじそんくらぶ